フィリピン人英語講師、厚生年金被保険者資格の該当者と認定

非常勤英語講師と厚生年金被保険者資格
「フィリピン人英語講師、厚生年金被保険者資格の該当者と認定」2016年6月17日東京地裁 

ポイント
非常勤(パートタイマー/アルバイト)の英語講師が、社会保険の適用事業所(株式会社などの法人事業所)に「常時使用されている人」であるかが、問題になった事案です。

事実の概要
フィリピン人英語講師が、下北沢の語学学校に、「人文知識・国際業務」の在留資格(当時)で就労した。6年後、別の語学学校に移り雇用契約を締結、厚生年金保険の被保険者資格を取得しました。その語学学校は、5年後、被保険者の資格喪失を届け、港社会保険事務所長(現日本年金機構)は資格喪失確認を語学学校へ通知しました。そのため、英語講師は、引き続き加入中であることの確認、社会保険審査官への審査請求、社会保険審査会への再審査請求をしましたが、いずれも請求棄却となったため、被保険者資格確認請求却下処分取消訴訟を、平成24(2012)年1月29日に提起したものです。
判旨
語学学校の外国人講師に対して、厚生年金保険の被保険者資格取得の確認請求を却下した行政処分を取消すとした判決です。つまり、同講師は被保険者に該当するとして当行政処分が違法とされました。
その理由は、①同講師の労働時間(レッスン前の5分を加えて)は常勤講師の労働時間と比較して4分の3に近似するものであったこと、②同講師の労働日数は常勤講師のものと変わりがなかったこと、③その報酬の額も標準報酬月額の最低額を大きく上回っており、十分に生計を支えることができる額であったこと、④事業主との雇用関係も安定していると評価することができることなど、です。
分析
社会保険適用事業所に常時使用されている人は、国籍や性別、年金の受給の有無にかかわらず被保険者となります。パートタイマー・アルバイト等でも事業所と常用的使用関係にある場合は、被保険者となります。1週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数が、同じ事業所で同様の業務に従事している一般社員の4分の3以上かどうかが問われた事例。
この後、厚生労働省は、平成28(2016)年10月から、パートタイマー・アルバイトの社会保険(厚生年金保険や健康保険)の加入対象を拡大しています。
[裁判長 舘内比佐志、弁護士 指宿昭一、中井雅人]

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です