
国際的な私的法律関係とは、たとえば、海外での日本人男女の結婚とか、亡くなった日本人の父が海外に残した遺産相続や日本で亡くなった外国人の遺産相続とか、日本で外国人同士が不注意で交通事故を起こし自動車を傷つけた(不法行為)のように、なんらかの国際的要素を含む私的法律関係のことを言います。
私的法律関係とは、民法や商法などの「私法」(=私<個人・会社>と私<個人・会社>との法律関係を規律する法)によって出てくる関係のことを言い、国と私(個人・会社)との法律関係を規律する「公法」(憲法や行政法など)とは区別されます。
逆に、日本での日本人同士の交通事故とか日本での日本人男女の結婚のように、国際的要素をまったく含まないものは、国際法務というよりも、国内法務の対象となり、日本の民法などが適用されます。
なぜ、国際法務が必要なのでしょう?
たとえば、20歳の日本人男性と18歳の外国人(中国人)女性の国際結婚の場合を見てみましょう。
日本の民法(731条)では、男性は18歳で女性は16歳になると結婚ができます。
一方、中国の婚姻法(6条)では、男性は22歳で女性は20歳にならなければ結婚できません。
さて、この20歳の日本人男性と18歳の中国人女性は、結婚できるのでしょうか?
日本の民法を基準にすればいいの?いや、中国の婚姻法を基準にすればいいの?
ますます、こんがらがってきますね。
そこで、困った国は、「国際私法」という法律をつくりました。
国際私法は、別名「抵触法」と言って、それぞれの国の法律が衝突(抵触)しているものを解決する法律だからです。
結論は、20歳の日本人男性と18歳の中国人女性は、結婚できます。
国際結婚の成立は、それぞれの国の国際私法に従うものだからです。
日本の国際私法によれば、「婚姻(結婚)の成立は、各当事者につき、その本国法による」(「法の適用に関する通則法」24条1項)となっています。
この場合の本国法とは、日本人男性は日本の民法で、中国人女性は、中国の婚姻法ではなく、中国の国際私法ということになります。
中国の国際私法は、「中華人民共和国渉外民事関係法律適用法」という名で、こう決めています。
「結婚の要件については、当事者の共通常居所地の法律を適用し、共通の常居所地の法律がないときは、共通国籍国の法律を適用する。共通の国籍を持たず、一方当事者の常居所地または国籍国において婚姻を締結したときは、婚姻締結地の法律を適用する」(21条)。つまり、3段階の法律適用を決めていて、この場合は、当事者の共通常居所地の法律=日本の民法となり、結婚ができることになります。あとは、届出などの形式的手続きが整えば、結婚が法的に成立します。
このように、私<個人・会社>と私<個人・会社>との国際的な法律関係を規律する私的な法律関係は、原則として日本の国際私法によって解決することになっています。もちろん、日本が承認したウィーン売買条約のような国際統一法(国際条約)や禁輸措置法規・労働組合法7条1号などの国際的強行法規、租税法や刑法などの公法は、国際私法に優先されます。